私子 27歳 
彼男 26歳 私子の彼氏。職場は別 
天子 25歳 新人の女の子。礼儀正しいが天然ぽくてぶりっこ 
同期子 23歳 私子の同期の子で彼男とも少し知り合い 
後輩男 25歳 私子の後輩で同じチーム 


天子はその年に入社した新人で、入社してすぐの頃は研修やらなにやらであまり関わりを持つことはなかったが 
夏頃から私子と同じチームに入って来た。 

最初は礼儀正しくて、言葉遣いもすごく丁寧で見た目も真面目そうないい子だな、という印象だった。 
しかし喋り方がぶりっこのような感じで(例えば、何かミスをしたときに高い声で「あん、あたしのばか~」というような) 
ぶりっこが苦手な私子は少し気になったが、悪い子ではないので仲良くしていた。

それからしばらくして、あるとき彼男と同期子と三人で会社帰りに夕飯を一緒に食べようということになった。 
彼男は同期子とちょっと知り合いなので久しぶりの食事で楽しみにしていた。 
そのことをチームの親しい人に話をしたら、天子も「いいな~私子さんの彼氏見てみたいな。私もご一緒していいですか?」 
と言ってきた。 
最初はちょっと驚いたが別に断る理由もないし、同期子と彼男におkをもらい一緒にご飯を食べに行った。 
次の日、天子は「彼男さんてかっこいいんですよ~私子さんがうらやましい」とほかの人に言っていた。 
ちなみに私は普通レベルの顔だが、彼男は同じ電車の見知らぬ女子高生にバレンタインにチョコを貰ってしまうレベル。 

その後あるとき、更衣室で着替えているときに天子が私に 
「私子さんっていつもどこで服とか買ってらっしゃるんですか?」 
と聞いてきた。天子の私服は地味目な感じでいつも安い服を買ってるという。 
そのときは普通にショップの名前とかを教えてあげた。 
しかしそれからしばらくすると、天子は私がいつも買っている服のブランドと同じのを着るようになっていた。 
それだけならまだいいが、私が着てたのと同じ服を着ている事もあった。 
でもまあ、たまたま教えたショップを気に入ったんだろうと思い、あまり気にしないことにした。


だが、それだけではなく、彼男の事もよく聞いてくるようになった。 
彼男の好みだとか、出身大学、最寄り駅、といろんな事を聞いてきた。 
このあたりまでくるとさすがにちょっと私子も怪しいと思うようになり、彼男にこのことを相談した。 
すると、彼男は驚くような事を話し始めた。 
以前天子と一緒にみんなで食事に行ったときの少し後から、天子からメールが来るようになったという。 
あのときにメールアドレスは交換していないが、天子はメールの中で私子から教えて貰ったと言っていたらしい。 
もちろん私は教えた事は一切ない。 
で、天子からのメールの内容は最初は「食事にいきなりご一緒してしまってごめんなさい。でも楽しかったです」 
みたいな内容で別に怪しい感じではなかったので彼男も普通に返していたが、 
最近は「私子さんのどこが好きですか?」とか「最近私子さんは後輩男とすごく仲がいいですよ」とかちょっと様子がおかしいので 
ちょうど私子に相談しようかと思っていたところだったという。 
私は後輩男の事はいい後輩だと思ってはいるが、弟みたいだし、今まで怪しい行動をとったこともないし、ましてや後輩男はもうすぐ結婚するし。 
もしかして彼男は私と後輩男の事を疑ってる?と思ったが、彼男は天子の事を初めて会ったときからなにやら警戒しているらしく 
天子のメールの内容など全く気にしていないというので安心していた。(彼男のアドレスを知っていた事に大いに不信感はあったけれども) 
だが天子からのメールはしだいにエスカレートしていき、「彼男さんと私子さんは似合わない」など 
その内容は明らかに私子と彼男を別れさせようとしているような感じだった。 
そしてあるとき、彼男は「天子にストーカーされてるような気がする」と言ってきた。 
さすがにそんなことを聞いたらこれ以上天子をほうっておく訳にもいかず、彼男と相談した結果天子を呼んで、三人で話し合うことにした。

次の日私子は天子に今日の帰りに食事でもしない?と誘ったらニコニコ喜んで一緒に来た。 
話し合いの場のレストランに着くと、彼男はもう先に来ていたようだった。 
天子は彼男の顔を見ると、それまでニコニコしていた顔から一変しあまり見たことのない怖い顔というか無表情になり、 
「どうして彼男さんがいるんですか。」 
とぽつりと言った。 
彼男は「ちょっと三人で話がしたいんだけど」というと、天子は数秒黙っていたが「いいですよ」と座席に座った。 
そして、三人席に着き、彼男は「いきなりだけど、最近俺の事付けてたりしてる?」と聞いた。 
私は天子が「そんなことしてるわけない」と否定するかと思っていた(というか否定してきたあとの切り返し方を前日からずっと考えてたのに…) 
が、しかし天子は普通に認めた。 
これには私子も彼男もちょっと拍子抜けしたが、どうしてそんな事をしたのかたずねた。 
すると今度は黙っているので、私子は「もしかしてだけど、私と彼男を別れさせようとしてない?」と聞くと天子は突然泣き出した。 
「だって、だって…。しょうがないじゃないですか。好きになっちゃったんです…」と泣きながら話し始めた。 
私は困った顔で彼男を見つめると、彼男は天子に向かって「あのさ、天子さんが俺の事を思ってくれるのは嬉しいけど… 
と、ここまで喋った時、突然天子は今までに聞いたことのないような低い声で 
「お前の事じゃねーよ!!ボケ!!!」と前に置いてあったグラスの水を彼男に向かってぶちまけた。 
私も彼男も突然の事で訳もわからず硬直状態。 
数秒間たって気がついた私子は「えっだってさっき好きになったとか言ってたじゃん!?え?なんで?」と動揺しながら聞くと 
天子はまた泣きながら元の高い声に戻り、「私が好きなのは…私子さんです!!」 


その後彼男にかかった水を拭いたり、店員さんに謝ったりして大変だったが、私はびっくりしながらも天子に「ごめん無理」と告げると 
天子も素直に諦めると言い、今までのことも謝ってきたので話し合いはなんとか無事に終わった。