私子:私(♀)
彼男:元彼(♂)
ヤバ子:元彼の幼じみ(♀)メンヘラ
友男:サークル友達(♂)

私子と彼男は大学のサークルで知り合いました。
同期で気が合ったので二人であちこち遊びに行っている内に彼男からコクられてお付き合いを開始。


気になったのが、彼男がケータイを手放さず、デート中でも電話に出ることがあること。
お風呂に入る時も脱衣所まで持っていき、着信が来ると慌てて風呂場から出て話をしているんです。
それも長いときは1時間くらい電話して湯冷めしたってことも。
「誰?」と聞いても「バイト先からだよ」「高校の友達」とか言いますが、口調が慌てふためいている感じ。

さすがに不審に思って彼男のケータイの着信履歴をこっそり見ると
「ヤバ子」という人から毎日、多いときは1時間おきくらいに着信がありました。
「浮気してるのか…」と気持ちが冷めかけると同時にヤバ子と一度話してみたいと思った。

今思えばこれが大間違いだったんですけれども、その時は
・彼男と私子が付き合っているのを知っていてちょっかいを出してきているのか
・それとも私子より前に付き合っているのか
・彼男がフリーだと思っているのか
を知りたかったんです。
ヤバ子が本命なら彼男のことをあきらめようとか考えてました。
ショックだとはいえ、彼男のことはまだ好きでしたから。

ある夜、彼が珍しく携帯を置いてコンビニに行った時に、ヤバ子から着信がありました。
すごく心臓がドキドキしましたが、電話に出てしまいました。
いきなり「彼男くん?今手首切ってる…」と言われるなんて思いもよらず。

ギョッとしながら、
今、自分は彼男と付き合っていて彼女であるということ、
彼男のケータイに沢山着信があるけど、二人はどういう仲なのか教えてほしい
ということを聞いてみたら、

「ウチね、彼男くんの運命の人なの。現世では彼男はあなたを選んだけど、来世ではウチを選ぶと約束した」
みたいなことを延々とまくしたて、その中で何となくわかったのがヤバ子は彼男に好意を抱いているらしいということ。
とはいえども、あまりに電波な内容にポカーンとしていたら彼男帰宅。
私からケータイをひったくり、「ちょっと後で話そう!!」と電源を切った。

ちょっとして落ち着いてから彼男に今までの経緯を話し、ヤバ子とは結局誰なのかを聞くと、

ヤバ子は彼男の幼なじみだが、高校の時に片思いしていた男に振られてから精神を病んだ。
ケータイの着信は、リスカしたとか薬を飲んで死んでやるなどと言ってヤバ子が彼男に構ってほしくてやっている。
彼男が私子と付き合っていることは知ってるはずだが、電話をやめない。
でも、私子が彼男の彼女だから、ヤバ子のことは気にしないでいい。
ヤバ子は小さいときに親を亡くしたから大変なんだ、わかってやってくれを連発されました。

一旦その場では、私子とデートしている時にヤバ子の電話に出るのをやめることを約束してもらいました。



しかし約束してもらってから1週間経ったころから毎日彼男のアパートに変なものが置かれているようになりました。
最初は手作りっぽいタッパー入りのお菓子から始まり、彼男も気味悪がってゴミに出していると段々エスカレートして
「彼男」「ヤバ子」と書かれた紙が縫い付けられた人形が赤いリボンでぐるぐる巻きになったものが郵便受けに入っていたり
「私子」と赤字で書かれた人形が頭っぽい部分が外され、胴体?に糸切り用の小さいはさみが刺さった状態で部屋の目の前にあったり…

さすがに身の危険を感じて、彼男にヤバ子の保護者に連絡しよう、警察に行こうと話しましたが、
「俺がついているから大丈夫だよ。あまり大事にしたらヤバ子がかわいそう」を繰り返されて話にならず、
怖くて仕方なかったのも溜りに溜まって、ある日とうとう彼男と大喧嘩をして別れました。
「ヤバ子がかわいそう」にしても、どうみても彼女に敵意や殺意を向けている人をそこまでかばうのか…と冷めました。


別れたといえども合鍵を返しておらず、また喧嘩した日、彼男の家にPCを置いてきてしまったので、取りに行く必要がありました。
ちょうど学期の終わり近くだったので、嫌々ながら彼男の家へ。
経緯を話してあって且つガタイのいい友男にガード役をお願いしました。
彼男は学科の友達と遊びに行っていていないということだったので、
昼間といえども念のため、友男についてきてもらいました。

しかし、アパートの階段を昇ると、誰もいない筈の彼男家の前に女の人が立ってました。
先だけ茶色の黒いロングで色黒、両耳にピアスをジャラジャラつけているのにゴスロリ。
彼男経由で知り合った人の中では見覚えがまったくない人だったので、
「これがヤバ子か…」とわかって一気に血の気が失せました。

友男に目くばせして離れようとしたそのとき、

この悪魔がああああぁぁ!!!!彼男を堕落させようとしてもそうはいかないわあぁぁあ!!!!消してやるうううううう!!!!

とその女がこっち向かって走ってきました。
友男に向かって警察を呼ぶよう叫んだちょうどその時、後ろからヤバ子に突き飛ばされ、階段の踊り場のあたりまで落ちました。
足首をひねったようですぐに立てずにいるとすぐ目の前にヤバ子が駆け下りて仁王立ちになりました。

ハアハア言いながら勝ち誇ったような顔でヤバ子は鞄から色んなものが結び付けられたはさみを取り出して、頭上に構えました。

「ああ…殺されちゃうのか…」と家族や友人の顔を思い浮かべていたら、


ヤバ子!!!お前やめろってえ!!!!

と叫びながら何故か彼男がやってきました。
(後で聞いたのですが、ヤバ子から「家まで来たよ」的なメールが来たので、鉢合わせたら大変だと戻ってきたそうで)


ヤバ子は「彼男く~~ん」と猫なで声で彼男に抱き着くと、私の方を向いて、
あの女は悪魔だ、彼男くんの命を削り取っているんだ
みたいなことを言っているのを彼男は「うんうん、そうだね」と肯定していました。

茫然としていると、友男が呼んだパトカーがやってきて、警察官の方に事情聴衆みたいなことをされました。
ヤバ子については保護者まで連絡をしようにも、保護者の人が体調を崩していて実質目が行き届いていない状態だったそうです。

元から彼男に好意を持っていて、二人は結ばれるんだとしていたヤバ子は私子の存在を知り、
二人の仲を邪魔する悪人として人形を使って呪ったりしていたそうです。


私は捻挫してしまったので、病院代はヤバ子が負担すべきではと聞いたら
正直痴話喧嘩に介入することは難しい、どうにか当人同士で解決できないか、みたいなことを言われてすごく悔しかったです。

結局ヤバ子の保護者の連絡先を彼男から聞き出して直接訴え、
治療費は出してくれることやヤバ子を精神病院に入院することを決めてもらいましたが、
彼男は「ヤバ子は大変なんだからわざわざ病院に入れなくても」を不満そうに繰り返していたので
話し合いの場にいた友男に殴られていました。

それからしばらく一人で外にいるのが怖くて一緒にいてもらっている内に、友男と付き合うことになりました。
彼男は経緯がサークルの人に知られて居ずらくなってやめて、半年もしないうちに自主退学したと聞きました。
先月友男にプロポーズされたので、厄落としさせてもらいました。