B男の彼女の立場だったことがありました。
就職して初めて付き合った相手が、大学でラグビーやっていた人で
私は疎かったから知らなかったけれど有名なチームの重要なポジションの人だったようです。


体ががっちりして、笑うと目が細い目がタレて
デーブ大久保をもっと固太りさせて筋肉質にした感じでした。
私は「太って笑顔の素朴な人に悪い人はいない」と思いこんでいたのと
自分が太れない体質のせいか太った人が好きで
昔から「デブ専」と言われていました。
でもそれまでは憧ればっかりで(テレビで見るプロレスラーとか、柔道家が好きでした)
彼氏はその人が初めてでした。

彼氏は大学を卒業してずいぶん経ってましたが
しょっちゅう大学に通って後輩の指導に行っていました。
そのたび私はお弁当を作るよう言われ、30人分強のお弁当をほぼ毎週作っていました。
はっきり言って比較的安いお米と卵だけでも相当な量で、出費です。
でもそのころの私はスポーツって崇高なものだと思ってたから言いだせませんでした。
ちょっとでも質が落ちると彼に怒られたし。

そういえば彼の口癖は
「女にはわからない」
「ラグビーボールを持ったことのないやつにはわからない」
「この尊い汗の重さは凡人にはわからない」
でした。
わからないわからないって言うことでこっちを丸めこもうとしてたんでしょうね。


「これから行く」って彼から連絡あって、待ってると
彼が最近、部に顔を見せなかったAくんを連れて「メシ食わせてやってくれ」と言いました。
二人分しか用意してなかったから私の分を食べさせて
私は男同士の会話に邪魔だというので、その後寝室に追いやられました。
二人は明け方に帰ったけど、テーブルは食べ残しのお皿とビールの空き缶だらけ。
でもAくんがすっきりしたならいいかな、と思ってました。

しかしその後も何度も同じことが。
彼はラグビー部をやめたい、やる気がなくなった、という部員を見つけるたび
この部屋に連れ込んで、ごはんを食べさせ、ビールを飲ませ、
「俺っていい先輩」をやっていました。
実費は全部私もちで。


私が「この人、思ってたのと違う…」と理解しつつあった頃、最初に来てくれた
Aくんと数人が、彼が部のマネージャー(3人のうち2人と)と浮気していることを
教えてくれました。
そのころにはうすうすわかっていたし、「ああやっぱり」って思うだけで
涙も出ませんでした。

その二日後、いつものように「先輩に悩みを聞いてもらえるっていうんで…」と
ラグビー部後輩Gが来ました。
もう彼とは別れる気だったし、いつものノルマをこなすような気分で家にあげて
彼が来るのを待っていたら、いきなり腰にタックルされて、押し倒された。

鼻息をフガフガさせながら、Gが
「彼が私をヤっていいと言った」
「今まで何人にもヤらせている(ウソ)」
「ヤリマンだしもう別れたいから証拠固めのためヤっちゃってくれ。写メも撮っておけ」
言われたことを明かした。

だからお前に逃げ場はないんだ諦めろ、というつもりでGは言ったらしいですが、
私はあまりの屈辱にブチーーーンと切れて、
手に当たるものすべてを掴んでGの股間を攻撃しました。
男性の急所といえばそこしか知らなかったから、なんでも掴んでそこを殴った。
カン切りを掴んで股間にぶつけたら、血が出て、Gがうずくまって泣きました。
それでも怖かったからさらにいっぱいいろいろ投げて、
まな板をかまえたらGがさらに泣いて、「もうしません」と言ったけど、信用できないから
まな板を構えたまま警察に電話した。

警察が来たときGはまだ泣いていました。
気持ち悪いので「外に出てもらってたから
パンツ一丁でずっとアパートの廊下で泣いていました。
カン切りの傷がけっこう深くて、なかなか血が止まらなかったので
もうだめだと思って泣いていたらしいです。


その後、そのラグビー部は他にも問題が山ほどあったことが判明し
顧問が首になったり、OBの一部が事情聴取に呼ばれたりしたということで
彼もそのうちの一人でした。

私は彼に二度と会わなかったけれど、
同じような目にあっていた昔なじみの女性が彼に会ったとき
「女にはわからないってさんざん言ってたよね?レイプ魔の主張なんてわかるわけないじゃん。
アンタのお母さんも、あの子がわからない、わからないって今もずっと泣いているよ」
と言ったら、彼は号泣していたそうです。

自分の母親が泣かない限りわからないもんなんですね。不思議です。
それ以来、私のスポーツマンに対する偏見はなくなりました。
でもまだなぜか太った人は好きです。