私子(22歳・法学部・大学卒業間近)
彼男(22歳・6年制の学部生)
A子(24歳?彼男の同期・浮気相手)
年齢は当時のもの。
登場人物は主にこの3人です。
大学4年目の秋~冬の出来事でした。


大学に入ってから講義のコンパで出会い、
とんとん拍子でおつきあいに発展した私子と彼男。
当時の私は苦学生で、学生生活とバイトで忙しいながらも、
それを理解してくれる彼男の協力もあり、
順調に交際を続けていました。
交際4年にして、諸事情あって一人暮らしの彼男の家に
私子が居候させてもらう形で、同棲がスタート。
「色々大変なのは知ってるし、家賃はいらない。そのかわり自炊とかして節約しよう」
と、考えられないくらいにお世話になっていました。
互いの両親も状況は知っていて、彼のご両親にも大変お世話になっていました。
私と彼男の関係はというと、出会ったころからその頃まで、
ずっと変わらずの相思相愛、下手するとバカップル。
ですが、大学のキャンパスや人前では節度ある行動を保っていました。
要は、波風なく、とても充実した日々を送っていたんです。

ところが、大学4年目のある日。
それは起こりました。

その当時、私子は難航した就職活動も無事終わり、
正式な入社前にその会社(小売業)を経験しておこうということもあり、
バイト先をその就職先に移したところでした。
ようやく自分一人でも稼げるようになる、
彼男への負担も減らせると、少し前のめり気味に頑張っていました。
4年目後期でしたが、講義もそこそこあったため、
授業→バイト→疲れて帰宅
ということが週の4,5日はありました。
小売業という職種ということもあり、土日出勤も当然ありました。
と、忙しくなってはいましたが、同棲しているため、
家に帰れば彼男とは会えるし、あいかわらず自炊もしていて、
学生の身分でしたが、夜の生活も拒んではいませんでした。

表向きは順調でしたが、その頃から、少しすれ違いは発生していました。
久しぶりの土日休み、彼男に「どこか行こう」と言われても、
「今日は疲れてるから」と断ることがあったり、
何かと小さなことで口喧嘩になったり。


その日も、最初は小さなことが原因で、家で喧嘩が始まりました。
喧嘩の原因や詳しいことは覚えていませんが、
発覚の発端となった言葉は今でも覚えています。
私子「最近おかしいよ!何か隠し事でもしてるんじゃないの?!」
彼男「そんなことないよ・・!」
私子「それでも、最近何か変すぎる。浮気でもしてるんじゃないの!?」
彼男「・・・」
押し黙ってしまった彼男。
そして俯いて、何かを考えている様子。焦る私子。
彼男「・・ごめん。」
私子「何が?」
彼男「私子がいるのに・・俺、他の女の人とデートした」


その言葉を聞いて、私子は頭が真っ白になりました。
それまで、多少軽い発言はあったところで、
実際に行動に移したことなどなかった彼男からの衝撃の告白でした。
彼男「最近私子、俺のことかまってくれないし、就職も決まって、
一人で生きていけそうだし。
今までは俺が支えてあげないといけなかったけど、もう大丈夫でしょ?
でも、その人の話を聞いてると、私子ほどじゃないけど、大変そうなんだよ。
だから、俺、守ってあげたくなってさ。
もう、俺は私子には必要なさそうだし・・」
私子「じゃあ、私のことはもうどうでもいいってこと?」
彼男「そう意味じゃない!私子は大事だよ!けど、その人に惹かれてるのも事実」
私子「・・」
彼男「でも、この前の日曜に喫茶店でデートして、告白したら振られた。
『彼女がいる人にそういうこと言われても困る』、って。」
私子「は?私がバイト行ってる間にそんなことしてたの?」
彼男「最低だよね・・。でも、もうふられたんだよね・・」
私子「それで機嫌悪いの?」
彼男「そういうわけじゃないけど・・」
私子「私がいるのに他の女好きになって、で勝手に振られてきたの?最悪」
彼男「わかってる・・」
私子「最悪」
彼男「うん・・」

その話を聞いて一番ショックだったこと。
それは、その子が不幸だから好きになった、私が幸せになったから、
もう自分はいらないと、彼男が思ったこと。
正直唖然としました。今から頑張って稼いで、
二人の生活楽にしていこうと意気込んでいた矢先ですよ。
私子「彼男が私に必要ないって、マジで言ってるの?なんで?
私、一言でもそんな風にいったことある?
幸せになったらハイサヨナラって、何、私って彼男にとってその程度の存在?」
彼男「そうじゃないけど・・だって、最近忙しい忙しいって、
一緒に遊びにいったりしなくなったじゃん。
だから、私子にも原因はあるんだよ」
私子「納得いかない」
彼男「だから、自分でも最低だって思う。」
私子「何、開き直り?」
彼男「・・・」
私子「相手、だれ?」
彼男「教えない」
私子「なんで?」
彼男「もう振られたから関係ないでしょ?」
私子「いや、関係ないわけないじゃん。浮気でしょ?」
彼男「だから、もう終わったから!」

思い出しながら書いてると、gdgdになってきたので端折ります。
その日は、そんな感じで話は平行線、浮気相手の正体はわからずじまい。
ただ、日曜日に喫茶店デートしたこと、コンタクトを買いに街まで一緒に行ったこと、
夜私子が寝ている間に家を抜け出して図書館で会っていたことなどを暴露。
一つだけ、体の関係は持っていない、と激しく強調されました。
正直、まったく納得していませんでしたが、
次の日も講義→バイトのコンボだったため、深夜12時を回ったあたりで一時休戦。
一緒に寝たくありませんでしたが、ワンルームのため、やむを得ず。
布団を離してしいて就寝しました。が、当然ゆっくり眠れるはずもなく。

次の日から、憂鬱な日々が続きました。
講義に行ってもあまり内容は入らないし、バイトに行っても上の空。
周りに心配をかけないように空元気だけは発動しつつ、帰ってきては彼男と話し合い。
最初の暴露の日からずっとですが、自分のことを悪いと言いながら、
彼男から謝罪の言葉はありませんでした。
隠れてこそこそメールはするし、ある日の夜には、また抜け出して、
図書館での密会に行っていたようです。
それでも私を大事にするという言葉は発する。
何が何だかわからない。
私子は疲れ果てていました。部屋を出ていくことも考えましたが、
もしそうすれば、大学卒業もままならなくなる、就職だって白紙になる。
(私子の実家は、大学から電車で2時間の距離)
そうなれば、それまで頑張ってきたことが水の泡。
就職すれば彼男と離れて一人暮らしもできるし、
彼男が改心してくれれば、また昔の通りに生活できると思い、
何とか我慢する方向で日々を過ごしていました。

一週間ほどたって、私子の気持ちも落ち着いてきて、
彼男も隠れてメールすることもなくなり、昔のようにやさしくなってきました。
忙しくてかまってあげられなかったのは私子の責任であり、
家に住まわせてもらってる以上は、これまでよりも
彼男に気を使ってあげようと思いました。
謝罪がなかったことだけが心残りでしたが。

「前から言ってた研修グループのキャンプ、行ってもいい?」
彼男がそう切り出してきたのは、最初の暴露から10日後の夕飯後でした。
1ヶ月ほど前から予定は聞いていました。
1年間同じだった研修グループで、一泊二日のキャンプに行く予定がある、と。
当然私子は、浮気相手との秘密旅行じゃないかと疑いました。
ですが、間違いなく研修グループでのキャンプであり、
宿泊先は高校時代からの友達の親戚の家であることや、
なんなら誰かに確認とってもかまわない
とのことだったので、行かせることにしました。
ここであまり束縛しすぎると、また浮気相手のところに行ってしまうかも、
という不安があったからかもしれません。
二日後の土曜日、彼男は上機嫌でキャンプへと出発しました。
「大好きだよ」と出掛け際に私に言っていきました。


日曜日の夕方、彼男が帰宅。
その時バイトに行っていた私子の携帯にただいまメールが入りました。
バイトを終えて家に帰ると、いつも通りの彼男がまっていました。
キャンプの話を聞くと、色々と具体的な話をしてくれ、
あいまいにごまかされることはなかったため、
本当に研修グループでの集まりだったのだと胸をなでおろしました。
その夜はいつも通りの夕飯をとり、いつものように話しながら、就寝。
・・とはいかず。
さすがに不安になっていた私子は、悪いと思いつつも、
彼男の携帯を見てしまいました。
彼男は隣でぐっすり寝ていました。
昔はかかっていなかったロックがかかっていて、まずそれにショックを受け、
いつも彼男が使っている番号をいくつか試すと解除。

中には、A子という女性とのラブメールがたくさん詰まっていました。
きちんとフォルダ分けまでされて。
しかも、このA子、彼男の話によく出てくる同じ研修グループの方でした。
私に黙って、浮気相手のいるグループでキャンプにいったことだけでも
内臓がひっくり返るほどの思いをしましたが、
メールをみていると、どうやら集まりは土曜日のうちに終わっていて、
土曜の夜からは二人っきりの時間だった様子。
人間驚きすぎると、声が出ないほど息が詰まるんだと、このときはじめて知りました。
A子のアドレスを私子の携帯に写し、その日は眠れないまま朝を迎えました。

彼男に携帯を見たことは言わず、翌日からも普段通りにふるまいましたが、
私子はA子と彼男に復讐しようと決心していました。
寝たふりをして彼男の携帯を毎夜チェックし、機会を伺っていると、
次の土曜日、二人は会う約束していることが分かりました。
私子はバイトの予定が入っていましたが、無理を言って、
休みにしてもらい、二人の逢引き現場に凸を決行しました。

この時ほど自分と戦ったことはありませんでした。
4年間付き合った彼男と別れるかもしれない、修羅場になることに覚悟を決めて、
二人の待ち合わせ場所が遠くに見える場所にスタンバイ。
のこのこやってくる彼男。そしてほどなくして現れるA子と思しき人物。
付き合い始めのカップルのように初々しい様子に、私は得も言われぬ気持ちになりました。
が、ここまで来たのだからと、自分に言い聞かせ、歩き始めた二人に声をかけました。

その時の彼男の表情と言ったらありませんでした。
びっくりした顔から瞬間で血の気がひいて真っ白に。
A子は雰囲気で察したのでしょう、おびえた表情になりました。
立ち話も何だったので、近くのファミレスへ。
午前11時のガ○トに、何が悲しくて男女3人で入らなきゃいかんのでしょうか。
極力気持ちを落ち着けて、彼男とA子と、私子の質疑応答が始まりました。

Q.いつからの関係ですか?
A.一月半前から。私子が就職決まったころ。
Q.体の関係は?
A.先週の一度だけ。
Q.A子さんは私子の存在を知っていましたか?
A.知っていました。彼男がよく話していました。自慢の彼女だと。
Q.自慢の彼女を裏切ってまでA子さんと付き合いたかったのですか?
A.無言
Q.A子さんは彼男が好きなのですか?
A.最初は申し訳ないと思っていたが、彼男があまりに迫ってくるので好きになりかけています。
Q.彼男さんは今後どうしたいのですか?
A.無言

彼男は、私子が出てきてから、ほぼ言葉を発してしませんでした。
質問に答えていたのは全部A子。
その様子から、彼男をかばうような気持ちすら見えました。
そうか、悪者は私か。


私子「じゃあ、彼男はA子さんに任せます。私は身をひきましょう」
A子「それは・・」
私子「私も就職決まっていますし、もう自分で何とかできます。
今まで彼男にはお世話になりましたが、良いタイミングだったと思いますよ」
私もやけになっていました。
自分の気持ちの整理はできないし、彼男の気持ちもわからない。
浮気されたことは事実だし、この二人を見ていると、
私は邪魔者でしかないと思っていました。
ずっと俯き加減で私子の顔も見ようとしない彼男に、正直嫌気もさしていました。
私子「本日はご迷惑をおかけしました。私はこの辺で失礼します」
無言のA子。まだ顔を上げない彼男。
失礼しますといったものの、私子の帰る場所は彼男の部屋なわけですが。
荷物でもまとめて家を出る準備でもしようと、
その時はかんがえていました。

二人と別れた後、私はしばらく公園で頭をひやし、
そのあと部屋に戻りました。
彼男はまだ帰っていませんでした。
随分と長いことお世話になった部屋を見て、一人で泣いてしまいました。
が、泣いていても何も始まらないと、無理やり自分の荷物整理開始。
思い出の品とか発見しつつ、一人で微笑んだり泣いたりしてる姿は、
自分で思い出しても気持ち悪かったと思います。

そんなところへ、彼男が帰宅してきました。
青ざめた顔で私子を見たかと思うと、突然わめき始めました。
彼男「なんで?!そんなに俺のことが嫌いかよ?!」
返す言葉が見当たらないとは、このこと。
あなたのことが嫌いなら、私は今こんなに泣いていない。
彼男「就職が大事なんだろ!俺よりも!せっかく俺に優しくしてくれてたA子まで、
お前が来たから距離を置くとか言い始めてさ!」
そこからずっと彼男のターン。
今まで住まわせてあげたていたのに、恩を仇で返された、
女の一人くらい見逃せ、そういうところが気が利かない、
大体お前は自己中だ、いつも自分のことばかり、俺だって被害者だ、
お前がもっと優しくしてくれていたら、こんなことにならなかった、
だからお前は俺が嫌いなんだ、などなど。

罵倒されながら、ダウンしていた私もふつふつと怒りがわいてきました。
私子「だから浮気したの?」
おそらく、相当に怒りのこもった声だったのでしょう。
途端に黙り込む彼男。
私子「言いたいこと言ってすっきりした?」
顔をそむけて、うつむく彼男。
私子「まだ何か言いたいことない?全部吐き出しちゃいなよ」
言葉だけ見ると優しそうですが、そんなものではなかったと思います。
無表情の女が、見下し目で低い声でこれを言っていたんですよ。
私が悪かったのか、全部私のせいなのかと思う声と、
悪いのは私を裏切った、目の前にいるあさましい男だという声が、
私子の頭の中で何度も何度も交錯しました。

気づけば彼男は泣いていました。
そして、細々した声で、いかに自分がさみしかったか、
就職が決まってイキイキとしている私子を見て引け目を感じていたか、
自分だけが取り残されていく感じで耐えられなくて、
それが理由で、身の上不幸なA子に好意を感じてしまったとか。
さみしいと誰にでも股を開く女もよくいますが、
さみしいと誰にでも棒を突っ込む男もいるんですね。

私子「彼男の気持ちは分かった。
けど、申し訳ないけど、もう一緒には住んでいられない」
そういうと、捨てられた子犬のような目で(例えでなく、本当にそう感じた)、
彼男は私にすがってきました。
いやだ、行かないでほしい、もう二度としないから、など、
今でこそ例のコピペがありますが、浮気をした人の常套句の垂れ流し。
情に流されかけましたが、あの夜から見ていたメールと、
先ほどの罵声が私の心を押してくれました。

本当に好きだったし、将来はきっとこの人と幸せになるんだろうな、
と思ってたからこそ、裏切られたことや嘘をつかれたことが苦しかったです。
今後もきっとこんな苦しいことがあるだろうし、それを背負ってこの人と生きていけると思うほど、
そのときの私は強くありませんでした。
嫌がる彼男をなだめ、私にはもうあなたと一緒にいる意思がないことを何度も言い聞かせ、
翌々日、私は彼男の部屋を出ました。
彼男は私に、何度も「やり直そう」と言ってきました。
本当に反省していた様子もわかりましたが、
二人のためにならない、と言って断固拒否しました。
私子「だって、一緒にいれるワケないでしょ?あなたは私を裏切ったんだよ。」
彼男「ずっと一緒だよ、って言ってたのに・・」
その約束を先に破ったのは、自分のくせに。

その後、数日間はメールや着信が続いていましたが、着拒。
たまに学内で顔を合わせることもありましたが、
外では何も言ってこれない彼男。
私子の実家は先にも書きましたが、大学から電車で2時間。
さすがに家凸まではしてきませんでした。

私はその後、数ヶ月でしたが実家から通学し卒業、
就職後はできるだけ大学から遠い場所に希望をだし、一人暮らしを開始。
今はまだ新しい相手は見つかっていません。
どこまでも自分に甘かった彼男が、今は何をしているかわかりません。
浮気をし返したり、もっと何かしらできたかなぁ、と思うことがありますが、
あのときの彼男に一番ダメージがあることといえば、
自分が彼男の元から離れることだったのかな、とも思います。
そう思えば、立派な復讐だったのかな、と。