幼稚園からの幼馴染の結婚が決まって招待された。 
二人姉妹の妹で、小さい頃から人懐こくて可愛くて誰からも可愛がられた友人だったし、 
数年前から付き合っていて、どちらもフリーターだったので100万貯金ができたら結婚すると宣言していたので 
やっとお金が貯まったのか、と一安心したもんだった。 


結婚式も途中までは順調だった。 
新婦は凄く可愛くて、新郎はちょっとダサいながらも温かそうな良い人で。 
途中で新婦の姉のスピーチがあった。 
珍しいかもしれないけど、幼馴染はたった一人のお姉ちゃんが大好きで、 
敢えてお姉ちゃんからお祝いをして欲しい、とお願いしたらしい。 
ちなみにお姉ちゃんは地方公務員で独身。 
昔から真面目で大人しい人で、私も「お姉ちゃん」「お姉ちゃん」と甘えさせてもらったし 
よく「私子ちゃんが妹ならいいのに」といってくれたので嬉しかったのを覚えている。 

スピーチは最初からヘンだった。 
「私は小さい頃から妹が嫌いでした。」 
そっから入ったから。 
妹が出来るまでは親は何も言わなかったのに、妹ができてから「お姉ちゃんなんだから」と何でもかんでも我慢させられた。 
ピアノを習いたくてお願いしたけれど、お姉ちゃんなんだから我慢してといわれて 
友達の中で自分だけピアノが習えなくて仲間はずれにされた。 
それなのに妹子がピアノを習いたいというと親は反対しなかった。 
毎日勉強しろ、お姉ちゃんとして妹の見本になれといわれて勉強をどれだけ頑張って良い成績をとってもほめてもらえなかったのに 
妹は漢字のテストで60点を取っただけでも誉められていた。 
専門学校へいきたかったけど、妹が私立の女子校へ通いたいといったので無理だといわれた。 
仕方なく高卒で地方公務員になったが、本当は臨床の検査技師になりたかった。 
妹がかわいそうだからお前に介護を頼むと親に言われた時はさすがにショックだった。 
私はかわいそうじゃないのか、と思った。 

妹のために今日まで何でも我慢してきた。 
でも、今日から私は自由にいきる。 
退職届も出してきた。 
今日から私は「お姉ちゃん」を卒業します。 
妹ちゃん。 
貴方が勝手に持ち出して解約した私の積み立ては結婚祝いとしてプレゼントします。 
勝手に保険証を持ち出してサラ金から勝手に借りて、毎月1万円ずつ返すといいながら結局1万円しか返さなかったお金も、もういらないです。 
勝手に持ち出して売り払った本やDVDについても、もう何も言いません。 
ちょっと借りるね、といったまま二度と帰ってくることのなかった服や化粧品についても何も言いません。 
高校の時はじめてできた彼氏を奪ったことも、職場で知り合った男性を横取りしたことも何も言いません。 
ただ、今日から貴方の「お姉ちゃん」はいなくなります。 
それだけは覚えておいてください。 

場内がシーンと静まり返る中、お姉ちゃんは静かに泣きながら出て行った。 
誰も後を追わなかった(というか、追えなかった) 
新婦両親を見ると、母親は俯いたまま泣いていて、父親は決まり悪そうにタバコをふかしていた。 
幼馴染は高砂の上で顔を突っ伏していた。 
司会が必死で盛り上げようとするも、寒々しい雰囲気のまま披露宴は終わり、急遽二次会は中止された。