姑が死ぬ直前のこと。 
舅と私たち夫婦、小姑夫婦、小舅が病院に集合した。 
で、少し話した後姑が舅と二人きりで話したいと言ったので、万一のために小姑と看護師が 
カーテンごしに待機し、他の人はみんな外で待っていた。 
するとしばらくして突然大声が聞こえて、てっきり姑が死んだものと思って中に入ってみたら 
姑は寝たままぽろぽろ涙をこぼしていて、小姑がものすごい顔でバッグを握り締め 
舅をメッタ打ちにしており、看護師が必死で止めようとしていた。 

男三人でやっとのことで抑えたものの、小姑はワアワア泣いてなおも舅を殴ろうとして 
ほんとに大変だった。通りかかった人が覗き込むくらいの大騒ぎ。 
看護師に追い出され、ロビーで話を聞いたところ、こういう出来事があったらしい。 

姑「お父さん、私たちもうお別れだから、最後に一度でいいから愛してるって言ってくれない?」 
舅「……」 
姑「一度も、お父さんからそういうこと言われたことがないのが心残りだから…」 
舅「そういうことを言うのは男のプライドにかかわる。それに、心にもないことは言えない」 
姑&小姑「……!!」

それを聞いた夫&小舅は激怒。 
外で悠々と煙草をふかしていた舅を捕まえ、ボッコボコに。 
姑は、零細企業の経営者である舅を必死で支えて大変な苦労をしてきた人。 
自分が食べなくても家族には食べさせて、寝る間も惜しんで働いてきたそうだ。 
舅は自分の会社だけしか見てない人で、子供には小遣いなんかやらないし 
学用品や服も買ってあげたことがなく、その分も姑が負担していたそうだ。 
最近はそこそこ儲かって贅沢もできていたけど、夫が中学生くらいの時までは 
本当に苦しい生活だったと聞いている。 
そういう苦労の連続の生活が、姑の寿命を縮めたことは間違いない。
そんな糟糠の妻のために、たった一度「愛してる」も言ってやれないのかと… 
私は夫たちを止める気になれなかったし、小姑の夫も同じ気持ちだったみたい。 

舅を叩き出した後、病院に謝罪して姑の病室に戻った。 
ほがらかな人で、自分が死ぬとわかったときですら明るさを失わない人だったのに 
落胆というか何か大事なものが抜け落ちたような顔で、それでも必死に笑顔を作って 
すごく痛々しかった。 
それから数時間後、少し眠ると言って眠ったまま、姑は亡くなってしまった。 
いい人だったのに。 
舅は夫たちに怒っていて、訴えるとか財産は渡さないとか言っていたけど 
経緯を知った親戚中から批難を浴びて、おとなしくなった。 
後悔してるっぽいことも言ってたらしいけど、手遅れだよ。姑はもういない。